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盲導犬を知る

盲導犬訓練士になるには

盲導犬訓練士とは、どのような資格でしょうか?

盲導犬訓練士という資格について

盲導犬訓練士とは、国家資格でもなければ、公的資格でもなく、かといって民間資格でもありません。なぜなら、盲導犬訓練士は個人に与えられる「資格」ではなく、全国に9団体(12施設)ある盲導犬育成施設に「所属する」立場だからです。ですから、例えば関西盲導犬協会に勤務する盲導犬訓練士が協会を辞め、独立して1人で盲導犬の訓練を行ない、目の不自由な方に貸与する事はできません。だからといって、盲導犬訓練士になるための基準や試験がないかというと決してそうではありません。これについては後ほどご説明します。

盲導犬歩行指導員について

盲導犬訓練士とは、さらに勉強と経験を重ねて「盲導犬歩行指導員」になる途中の段階であると考えて下さい。いわばサナギの段階です。では、盲導犬歩行指導員とは何でしょうか?盲導犬歩行指導員とは、海外ではGuide Dog Mobility Instructor (GDMI)と呼ばれ、盲導犬訓練士(GDT)が主に犬の訓練を中心に行うのに対して、指導員は視覚障がい者に、盲導犬との歩き方を指導するのが主な仕事です。

ですから、指導員になるためには、目の病気のこと(眼科学)や障がい者の心理学などを勉強する必要があります。訓練士を目指す方々の中には、「自分は犬の訓練だけを仕事にしたい」と考える人もいるようですが、視覚障がい者の事を勉強せずに盲導犬を訓練するのは不可能です。ドライバーの特性を知らずに、良い車を作る事ができないのと同じです。ただし、指導員が犬の訓練を全くしないわけではありませんし、訓練士と指導員の仕事の重なる部分も多いですから、ここでは指導員もまとめて「訓練士」と呼ぶことにします。

盲導犬訓練士とは、どのような仕事でしょうか?

盲導犬訓練士の仕事内容

多くの人が、「訓練士は四六時中、犬の訓練をしている人」と考えるようですが、実はそうではありません。訓練士がさまざまな仕事を兼務していることを示すために、訓練士の平均的な1週間の勤務表を紹介しましょう。これで、盲導犬訓練士の仕事の大まかな流れが理解していただけるでしょう。

 
6:00 犬の排便当番        
8:00 担当犬の
ブラッシング
担当犬の
ブラッシング
担当犬の
ブラッシング
担当犬の
ブラッシング
担当犬の
ブラッシング
9:00 担当犬の訓練 街頭募金活動参加 訓練部ミーティング 担当犬の
アイマスクテスト
担当犬の基本訓練
10:00 盲導犬希望者の面接
11:00 テストの評価会議
12:00 休憩 休憩 休憩 休憩 休憩
13:00 担当犬の訓練 担当犬の訓練 担当犬の訓練 盲導犬ユーザーの
フォローアップ
担当犬の訓練
15:00 犬舎当番
16:00 犬の給餌と排便 犬の給餌と排便 犬の給餌と排便
16:30 報告書作成 報告書作成 報告書作成 報告書作成
21:00       夜の排便当番  
盲導犬訓練士の特徴

警察犬や災害救助犬、さらには麻薬探知犬など、一般に犬の訓練士と呼ばれる職業は複数あります。では、盲導犬の訓練士の特徴とは何でしょうか。それはひとことで言うと、「他人が育てた犬を、他人(視覚障がい者)のために訓練する」という事です。

例えば多くの警察犬の場合、警察犬訓練士が自ら交配(または購入)した犬を自宅で育て、自分で訓練した犬と共に2人3脚で仕事をします。一方盲導犬訓練士は、パピーウォーカーが1才まで育てた犬を、8〜10ヶ月かけて訓練し、視覚障がい者にその盲導犬と歩く方法を指導します。約2才で盲導犬デビューした犬は、その後およそ8年間、視覚障がい者と生活を共にします。こう見ると、盲導犬訓練士が1頭の犬とかかわる期間がいかに短いかが分かると思います。

盲導犬訓練士に求められる資質

これは盲導犬の訓練士に限った事ではありませんが、盲導犬訓練士に必要な資質は?と聞かれれば、@コミュニケーション能力、A創意工夫する能力、の2つがあげられるでしょう。上に書いたとおり、盲導犬の訓練士が1頭の犬とかかわる期間は長くて10ヶ月程度です。ですから、1才まで育ててくれたパピーウォーカーの方や他の職員とよく話をし、家や犬舎でのその犬の特徴をいかに聞き出すか、が訓練やマッチングでの大事なポイントとなります。

また、盲導犬の歩行指導をする相手は目の不自由な方々ですから、身振り手振りや図を使わずに、言葉だけでうまく説明するにはどうすれば良いか、常に考えなければいけません。盲導犬ユーザーの中には、若い大学生がいるかと思えば、自分の親よりもご年配の方もおられます。世代の違う方々に、より安全に快適に盲導犬と歩行してもらうためには何をどう伝えれば良いのか?この難題を最初から解ける訓練士はいません。模索と失敗を繰り返しながら、ケースバイケースでより的確な対応を体得してゆく柔軟性が求められているのです。

どうすれば盲導犬訓練士になれるのでしょうか?

盲導犬の訓練士・指導員になるには、まず盲導犬育成団体(全国9団体)のいずれかの職員となる必要があります。訓練士は全国に80名程度しかいないにも関わらず、希望する人が多いため、競争倍率の高い、狭き門となっています。職員となる要件は、訓練施設によりさまざまです。当協会では、学歴は高校卒以上、性別は問いません。採用は不定期で、多くの場合、欠員が生じてその補充を行ない、ホームページなどを通じて公募されます。

1つ頭に置いて頂きたいのは、盲導犬に関する仕事は訓練以外にも、犬舎担当、繁殖担当、パピーウォーキング担当、職員指導担当(後輩の訓練士を指導)、普及啓発担当(小中学校などでデモンストレーションを行なう)など、多岐にわたることです。訓練士を志望して就職したとしても、他の業務につく、あるいは何年かごとに業務をローテーションすることは珍しい事ではありません。さて、盲導犬育成団体に就職するのが狭き門であるため、就職するための準備や研修を行なう方もおられます。ここでは、そのような準備・研修を2つご紹介します。1つは、学校の長期休暇などを利用したボランティア活動です。

多くの場合、2〜3週間、犬舎の掃除などの雑用を行なって頂く事になります。これを行なえば就職に有利になる、というものでは(残念ながら)ありませんが、少なくとも、訓練士になれば必ず行う事になる犬舎作業を体験できるのは大きなメリットでしょう。また、訓練士や指導員の働きぶりを身近に見て、ご自分のイメージと近いかどうか確かめる機会にもなると思います。団体や時期によって、犬舎ボランティアを募集していない事もありますので、詳細は各団体に確認して下さい。もう1つは、視覚障害に関する専門知識や技能を身につける事です。代表的なものは、日本ライトハウスおよび国立リハビリテーションセンターが実施する研修です。修了後、一般に「白杖歩行指導員(白杖訓練士)」と呼ばれる認定を受ける事が出来ます(白杖だけでなく、点字や音声パソコンの使用方法などを学ぶコースもあります)。

白杖は、視覚障がい者が移動する際にもっともよく利用される道具ですが、適切に使わないと安全に歩行する事はできません。白杖歩行指導員は、視覚障害および白杖歩行のスペシャリストとして、専門的アドバイスおよび指導を行なう立場にあります。盲導犬の歩行指導と重なる部分は多く、実際に白杖の分野から盲導犬の世界に入る人もおられます。白杖歩行指導員の詳細については、(社福)日本ライトハウス養成部、または国立身体障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科までお問い合わせ下さい。

盲導犬訓練士はどのような勉強をするのでしょうか?

盲導犬訓練士と指導員(盲導犬歩行指導員)が勉強するべき科目として、以下のものが定められています。これは、全国9つの盲導犬育成団体が協議のうえ、養成カリキュラムや認定基準を定めたものです(日本盲人社会福祉施設協議会 リハビリテーション部会 盲導犬委員会の規定より抜粋)。

  1. 犬の訓練技術および犬に関する知識(犬解剖学、犬舎管理を含む飼育技術、犬の歴史、犬の感覚、犬と人間の相互作用、動物心理学、繁殖遺伝学、盲導犬の歴史、訓練方法論、公衆衛生学等)
  2. 視覚障害及び法律に関する知識(身体障害者福祉論、視覚障害概論、関連法規)
  3. 視覚障害者の歩行に関する技術及び知識(人間の感覚、運動のメカニズム、学習心理学及び教育方法論、老年学、ローヴィジョン、発達心理学、面接と評価の技法、カウンセリング、電子機器など)
  4. 盲導犬の歩行指導に関する技術及び知識(盲導犬の飼養に関する適正評価、フォローアップ、指導計画の立案等)

もちろんこれらの知識を習得するだけでなく、訓練・指導技術など、技術的要素に関しても一定の習得基準があります。最終的に、訓練士や指導員として相応しい能力、人格を持つと判断された者が、盲導犬訓練士および盲導犬歩行指導員と認定されます。ちなみに、盲導犬訓練士は3年間、指導員はその後さらに2年間の養成期間が設けられています。

先輩からのメッセージ

盲導犬訓練士 仲宗根 瞳(2003年就職)

「今まで、食べたいものがあってもガイドヘルパーさんが来るまで買いに行けず、それまで何日か我慢することもあった。しかし盲導犬が来てからは、好きなときに買い物に行け本当に嬉しい」。この言葉は、私が関西盲導犬協会に就職する前にあるユーザーから聞いた言葉です。この言葉を聞いたとき「好きなときに外出をする」ということが、その方にとっては困難であることを知りました。同時に、そのような視覚障がい者の方が多くいるということに気づかされました。

そのとき1頭でも多くの盲導犬の育成に私も関わっていきたいと強く感じました。あれから、6年が経ちました。実際この仕事をするなかで、想像以上に幅広い能力と労力を必要とすることを痛感しています。この仕事は、盲導犬の訓練だけができれば良いというわけではありません。視覚障がい者とコミュケーションを取り、盲導犬との歩行をその方が分かりやすいように伝えることも必要です。その他、盲導犬育成に携わる人々や職員間のチームワークなど人との関わりも重要です。

色々な壁にぶつかることもありますが、自分の訓練した犬が盲導犬となり視覚障がい者と颯爽と歩く姿を見ると、幸せを感じもっと向上したいという気持ちになります。今この仕事に興味がある方は、ぜひ訓練センターでの見学会や犬舎ボランティア、その他視覚障がい者関係のボランティアなどいろいろな経験をし、事前にこの仕事や視覚障がい者のことについて学ぶことをお薦めします。また、全国にある盲導犬育成施設は、それぞれが独立した団体となっていますので、各協会に足を運びその特色や考え方、雰囲気などを知ることも将来の道を選ぶための参考になると思います。

盲導犬歩行指導員 山口 浩明(1995年就職)

私がこの仕事を選んだきっかけは、ヘレン・ケラー女史の影響でした。目の不自由な人たちのお手伝いができないかと思ったからでした。当協会で働いた最初のうちは犬の訓練のことばかりを考え、悪戦苦闘の毎日。どうしたら犬がちゃんと覚えてくれるか、犬のことばかり考えていました。でも今は歩行指導員という立場になり、特に感じ、思うことは、この仕事は犬のことだけを考えているだけでは駄目だという事です。

歩行指導員という役目は、目の不自由な人たちの歩行に主に関わることは言うまでもありませんが、おこがましい話ですがそれ以上にその方の生活に関わっていく仕事だと感じています。盲導犬という『犬』を通して、その方の歴史、現在、そして将来にまで関わっていく仕事だと思います。もちろん老若男女問いません。これまで自分の不甲斐無さと、責任の重さに弱音を吐いてしまうことも度々ありました。

この仕事は犬が中心ではなく人間が主人公であり、その主人公の生活のお手伝いをするのが私たちなのだということを強く思います。私の一番の先生は、目の不自由な人たち。皆さんから厳しいことも言われますが、心温まる言葉もいただき勉強させていただいています。

私にとってこの仕事をして元気になるのは見の不自由な人たちから、『○○(盲導犬の名前)と一緒に△△に行って、××してきた』と報告をいただいた瞬間です。これからも初心を忘れず、がんばろうと思います。

公益財団法人 関西盲導犬協会


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