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季刊誌「ハーネス通信」

2017年01月のバックナンバー

盲導犬と坐禅体験

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福井県にある曹洞宗総本山永平寺で一泊二日の坐禅体験に参加してきました。一人旅であちこちのお寺をお参りするのも好きなのですが、今回は、福井駅で合流した友人と二人で永平寺へ。

午後2時、宿坊に到着。玄関で盲導犬の足の裏をふき、靴を履かせました。下足室にいた年輩の女性がしきりに盲導犬の大きいこととおとなしいことに感心しています。受付をすませると、物静かな男性が4階のエレベーターに一番近い部屋に案内してくださいました。
 四国八十八カ所の宿坊が盲学校の寄宿舎に似ていたのでそんな風に想像していたら、とんでもない! 引き戸をあけると滑り止めのあるスロープがあって、上がり框があり、右手に洗面所、洗面所の隣はトイレ。洗面所の向かいは14畳の和室があり、そこには座布団と座敷机とお茶と茶菓子がありました。洗面所の右隣にある四畳半の和室には、床がふたつ並んで敷かれていました。床の横には盲導犬のための四つ折りの毛布までが準備されてました。私は、和室に犬を入れることを極力避けているのですが、今回は準備してくださっている毛布を使わせていただくことにしました。
 4月から修行に来ているという22歳のお坊さん(いえいえ「お坊さん」ではなく「雲水さん」というそうです)、雲水さんが私たちの世話役としてこれからの流れを説明してくださいました。
 前もって携帯でいろいろ調べてきたものの合掌や坐禅のときの手の形など画像で表示してあるところはわからなかったので、雲水さんの手に触れながら三つの作法を教えてもらいました。宿坊の中を歩く時は、自分の胃のあたりで、左手でグーをして、右手の掌で左手のグーを上から包みかぶせるようにするのだそうです。でも私はハーネスを左手で持つので、このスタイルでは歩くことができません。そして、一歩部屋から出たら私語は禁止。
 午後4時、入浴。お風呂に入る時、出る時にも合掌、一礼します。
 午後5時半、雲水さんが夕食を部屋まで運んでくださいました。肉に魚はありませんが、おいしかったです。箸の袋に書いている、私には意味がわからない文句を唱えていただきます。食べ終わったらまたわからない文句を唱えてごちそうさまをします。食器は大きい器から順に重ねて廊下に出しておきます。湯飲みのお茶は全部飲まないで、残した湯飲みのお茶で箸の先を洗って箸袋に入れ、明日の朝食に使います。
 午後6時半、座禅。高さ70センチくらいの畳の上におかれた円形の座布団を足の裏で踏まないようにして、一気に立て膝かあぐらを組まねばなりません。周りの人がする様子を見ながらまねすることが私にはできませんし、このやり方を頭の中で描くことができず、何でもないことなのでしょうけれど私には難しく上手にできませんでした。そして、180度手で畳を押して回転し、壁と対面して、目を閉じないで、鐘がなると座禅の始まり。
 気合いを入れてほしい時は、鼻のあたりで合掌すると、右肩を竹刀みたいなものか竹なのかわかりませんが、パチッとたたいてくださいます。痛いかなと思いましたが思うほどではありませんでした。姿勢が乱れてくると物差しのようなものを背骨に当てて姿勢を直してくださいます。私は右に傾いているようで、普段から気をつけて座ろうと思いました。盲導犬は私の右下に置いた敷物の上で、鐘がなっても太鼓がなっても、竹刀のような竹と竹がパチッとなる音にもびっくりせず、ずっと静かに寝ていました。
 座禅が終わると、また、180度回転して、敷居を踏まないように70センチ下の床に降ります。そして、自分が座っていた円形の座布団を立てて形をきれいに整え、白い布が上になるようにしておいたら、次の方が座れるようにして、合掌して静かに退室します。座布団を元の位置に置くのですが、白い布に印がついていたら、触って自力で置けるのにな、と思いました。座禅の部屋に入る時は敷居を踏まないで右足から入り、出る時は左足から部屋を出ます。私は、敷居のあたりに来たら摺り足をして、指先が敷居にあたればまたぐようにしました。
 午後9時、就寝。
 午前3時10分、修行の雲水さんが引き戸ごしに声をかけてくださいました。午前5時からの168名の修業僧の読経は、心穏やかなる気持ちのお洗濯になり、なんとも言えないよい体験をさせていただきました。私の名前を呼ばれたら、修業僧の左肘を持って、迫力ある読経が唱えられる中、静かに立ってお焼香させていただき、天国、いえ極楽にいるような気持ちになってすごく感動しました。一方、盲導犬はいつも大の字で敷物の上で寝てました。
 その後、1時間あまり、世話役をしてくださっている雲水さんの案内で、お寺のお勧めスポットをまわりました。長い廊下を歩きながら、また、何百畳の部屋にも入って、日本で2番目に古い8人乗りのエレベーターに乗せていただきました。ちょっと狭いかしら? ドアが2枚あり蛇腹になっているようです。手動でドアを閉めて鍵をする音がするので、あー古いのやなぁって思いました。仏像にも絵巻にもさわれるわけではないので、そこは話を聞いて想像するだけですが、それはそれはたくさん歩いたので、とても広いお寺だということがよくわかりました。
 午前7時、朝食を部屋まで持ってきてくださいました。
 朝食後、「感じたこと、困ったことなどあれば教えてほしい」とわざわざ私たちの部屋に2人の雲水さんが来てくださいました。私は、「雲水さんに手引きの方法を知っていただくと、気持ちが楽かもしれません」とお伝えしました。
 永平寺に滞在中、私は白杖を使わず、落ち着いた素晴らしい盲導犬に変身していた私の盲導犬と歩きました。寺に入ってから出てくるまで、ブルブルっと体をふるわせることを一度もしなかった盲導犬に驚いている私です。そして犬用の靴が役に立ったことは言うまでもありません。
 午前9時に寺を後にして、福井駅で10時半の電車に乗って帰ってきました。帰宅してからゆっくりと携帯を使って永平寺をネットでみると、電話説法というのがあったので早速聞いてみました。これから時々聞いてみようと思います。
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